コミュニケーションを積み重ねて
親の言いつけを守る「いい子」だったはずの子どもが、ティーンエイジになって突然、暴力的になる。あるいは学校や社会に適応できず、殻に閉じこもってしまう。そんな問題行動を私もしばしば目にしてきましたが、やはり小さい頃からの家族関係、親が子どもにどう接してきたかが大きく影響していると思います。
極端に切れやすい子どもの例で多いのは、まず親の期待値が非常に高すぎるケースです。もっと優秀であってほしい、将来こういう職業についてほしいとか、親の理想や果たせなかった夢を押し付けている。更に家庭内のルールを、親が自分たちの都合や好き嫌いで一方的に決めてしまっている場合、子どもの不満がたまり、何かのきっかけで爆発するということが起こりがちです。
食事の後は直ぐに食器を片付ける、テレビは宿題が終わってみるといった、日常生活を効率よくきちんと送るためのルールは「親が決めるのが当たり前」でしょうか?私はそうは思いません。そのルールがなぜ必要なのかを子どもに説明し、話し合って決めていくべきです。たとえば玩具を散らかしっぱなしにしていたら、誰かがつまずいて怪我をするかもしれないから片付けなくちゃね、と説明すれば子どもも納得がいくでしょう。もし「友達と遊ぶ約束をしたから時間がない」といったら、今片付けられるものは直ぐに、残りは帰ってから片付けさせるとか、本人にとって無理のない約束をし、それを守らせることです。
また、子どもは失敗から多くのことを学びます。悪いことをしたとき、親は何が正しく何が間違ったことかを教える必要がありますが、傷つけるような叱り方をすべきではありません。叱りつける前に、なぜそんなことをしたのか、子どもの言い分にも耳を傾けて下さい。そして本当はどうすべきだったのか、子ども自身に考えさせ、正しい応えに導くことです。そういう小さなコミュニケーションの積み重ねが親子の信頼関係を強くし、難しい思春期にも大きくものをいいます。
欠点も含めて丸ごと受け入れる
どんな親も、子どもに「こう育ってほしい」と期待を掛けるものです。でも、その期待が本人の適性に合っているかどうかを常に考える必要があります。例えば、私の家の隣に住んでいた男の子は小さい頃から絵描きになりたがっていました。でも親御さんは「絵描きなんてばかばかしい。ビジネスマンになりなさい」と、たいへん厳しく教育していた。親としてはそれが彼のためと信じていたのでしょう。でも彼は14歳のときに家出し、行方知らずになってしまったのです。ご両親がどれほど衝撃を受けたかは言うまででもありません。
私にも三人の子どもがいますが、同じ兄弟でも個性は一人一人違います。親はその子に合った接し方をしなくてはいけないし、いいところを見つけて伸ばしてあげなくてはいけない。そして欠点も含め、全存在を受け入れてやるということが、ぜひとも必要なんです。
自分は、親が理想としているような子どもではない、丸ごと愛されてはいない − 子どもは、そういったことを敏感に感じ取るものです。親が「逞しいスポーツマンになってほしい」と望んでいるのに、自分は運動が得意ではない。試合に出たけれど負けてしまった − そんな時一番がっかりしているのは子ども自身です。
子どもは常に親の愛を必要としています。期待に応えたいと思っています。そこで「これができたら貴方を好きになってあげる」「こうゆうふうにできない子は嫌い」と愛情に条件をつけるような言い方をされたら、子どもはどう感じるでしょうか。条件つきの愛情は本当の愛情とはいえません。子どもの存在を否定し、○○することでもあります。どうか、ありのままのよさを認めてあげてください。そして「よく頑張ったね」と努力を誉めてあげてください。親の愛情のこもった誉め言葉は子どもを勇気づけ、生きていく力をはぐくむ魔法の言葉なのです。
親だって完全な人間ではないのですから、間違うこともあります。幼児期に子どもとの信頼関係が作れず、思春期になって困った問題が応じた場合、専門的なカウンセラーの助けを借りるのも一つの方法です。そして、失敗を認め、自分たちはいい親ではなかったけれど、いまはそれを修復したいと思っていると、子どもに対して伝えることも大事だと思います。